
「神は細部に宿る(God is in the details)」という言葉を、一度は耳にしたことがある方も多いかと思います。
元々は20世紀の著名な建築家、ミース・ファン・デル・ローエによる言葉とされています。
彼はモダニズム建築の巨匠として知られ、見た目のシンプルさの中に潜む緻密な構造美を追求しました。
この一言には、「細部にこそ美しさや本質が宿る」という哲学が込められています。
この言葉は建築業界にとどまらず、私たちが営むセレクトショップのような小売業、さらには飲食や宿泊、サービス業全般においても極めて重要な考え方だと感じています。
むしろ、商品やサービスの本質を“体験”として届ける業界ほど、この言葉の重みを深く感じる場面が多いのではないでしょうか。
私たちが日々接するお客様は、決して「価格」や「ブランド名」だけで判断しているわけではありません。
むしろ、無意識のうちに空間の空気感、スタッフの所作、ラッピングの丁寧さ、商品に添えられたちょっとしたメッセージ──そうした“細部の積み重ね”を通じて「このお店、なんか違うな」と感じ取っているのです。
本記事では、そうした「細部」がどのようにお客様の心に届き、競合との差別化に繋がっていくのかを、セレクトショップ経営の実体験を交えながら考察していきます。
私自身が意識している「伝えようとしなくても伝わってしまうこだわり」についてもお話しできればと思います。
同業の経営者の皆さまが、自店の魅力や価値を再確認し、さらに強化するためのヒントになれば幸いです。

細かい部分に拘ることが売上に繋がると信じています。
『神は細部に宿る』と感じる部分を書きたいと思います。
「神は細部に宿る」とはどんな言葉か

「神は細部に宿る」という言葉は、いわば“プロの矜持”とも言える考え方です。
私たちが見落としがちな、ほんの小さな違和感や、何気ない一手間。
そういったものにこそ、お客様は敏感に反応します。
どんなに優れたコンセプトや商品であっても、それを構成するディテールが粗ければ、全体の印象は大きく損なわれてしまいます。
この章では、この言葉の由来と、その哲学がなぜ私たちのようなセレクトショップ経営者にとって大切なのかを掘り下げてまいります。
建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉としての由来
「神は細部に宿る(God is in the details)」という言葉は、モダニズム建築の巨匠ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエの名言として広く知られています。
彼はバウハウス運動の中心的存在であり、「Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」という名言でも有名です。
一見するとシンプルで無駄のない彼の建築は、実はミリ単位で設計された精密さと、徹底された素材の選定によって支えられていました。
彼の美学においては、「美しさ」とは装飾ではなく、構造や素材、比率といった“本質”が表面化したものだったのです。
この「細部への徹底したこだわり」が、建築空間全体の印象を決定づけ、訪れる人に無言の感動を与える。
その姿勢こそが、「神は細部に宿る」という言葉に込められた意味だといえるでしょう。
小売業・サービス業におけるこの言葉の意義
この哲学は、建築に限らず、小売業やサービス業にもそのまま当てはまります。
私たちが提供するのは、単なる「商品」ではなく、「体験」や「感情の動き」です。
つまり、お客様が商品を手に取るまでの過程、店舗の空気感、スタッフの接し方、梱包された状態、開封したときの第一印象──それらすべてが「ブランド体験」の一部となります。
たとえば、紙袋の素材ひとつ、タグのデザイン、レジでの一言、納品書の折り方など、普通であれば気にされないような点であっても、それらが一貫した哲学のもとに設計されていれば、お客様は自然と「このお店、なぜか心地よい」と感じてくださいます。
逆に、どこかに“雑”や“安っぽさ”がにじんでしまうと、それは全体の評価を大きく下げてしまいます。
つまり、小売業における「細部」とは、お客様が“意識する前に感じ取るもの”であり、それがブランドイメージに直結するのです。
競争が激しく、情報があふれるこの時代だからこそ、誰もが見過ごしがちな“細部”に真摯に向き合う姿勢こそが、唯一無二の価値として伝わっていくのだと、私は日々の商いを通じて実感しています。
セレクトショップにおける「細部」とは何か

セレクトショップの魅力は、単に「良いモノを仕入れて売る」ということにとどまりません。
むしろ、その商品が「なぜそこに並んでいるのか」、そして「どんな文脈で提案されているのか」といった“背景”にこそ、お客様は惹かれています。
つまり、私たちの仕事は「目利き」だけでなく、「演出家」としての感性も求められるのです。
そう考えたとき、他店との差を生む「細部」とは、商品の選定から空間設計、接客、発送に至るまで、すべての接点に存在します。
以下では、セレクトショップにおける具体的な“細部”の要素を4つの視点から整理してみます。
商品のセレクト基準
セレクトショップの命ともいえるのが、「何を選び、なぜ選んだのか」というセレクト基準です。ただ流行しているから仕入れる、価格が手頃だから扱う──そうした基準では、他店との違いは見えづらくなります。
私の場合、そのブランドが持つ“哲学”や“背景”まで掘り下げ、たとえ一般受けしなくても「この価値は伝わる」と信じられるものを選ぶようにしています。
結果として、それが「この店は信念がある」と感じていただける要素になっていると感じます。
また、品揃えに“偏り”や“芯”があることも大切です。
全体のセレクトに一貫性があれば、お客様も「このお店を見れば、自分の好みに合うものがきっとある」という信頼を寄せてくれます。
店舗の内装・香り・音楽など五感への配慮
商品と同じくらい重要なのが、店舗という「空間」です。
照明の色温度、陳列棚の素材、ディスプレイの間隔、BGMの音量とジャンル、そしてふと感じる香り──こういった五感に訴える要素も、細部として大切にすべきポイントです。
私の店舗では、BGMは朝・昼・夕方で切り替え、照明は時間帯によって調整するようにしています。
また、ディフューザーには季節感を反映した香りを使用し、お客様が無意識に「心地よい」と感じていただける空間づくりを心がけています。
こうした空間設計は、「なんとなく居心地が良い」と感じていただけるかどうかに大きく影響します。
お客様の滞在時間や再来店率にも直結する、まさに“効く細部”です。
スタッフの接客対応や立ち振る舞い
セレクトショップでは、商品や空間の質に加えて「人」が与える印象も非常に大きいです。
スタッフの立ち姿、声のトーン、歩き方、そして接客中の言葉の選び方まで、お客様は意外とよく見ています。
私たちの店舗では、売り込まないけれど放っておかない、ほどよい距離感を大切にしています。
また、接客マニュアルに頼るのではなく、スタッフ一人ひとりがブランドや商品の背景をしっかり理解したうえで、自分の言葉で伝えるようにしています。
「話が合った」「押し売りされなかった」「あの人にまた会いに行きたい」──そう思っていただけたなら、それは接客という“細部”がきちんと機能した証拠だと思っています。
発送時の梱包や手書きメッセージなど
オンライン購入時の最後の接点である「発送」も、細部へのこだわりが光るポイントです。
箱や袋の素材、商品を包む紙、同梱するメッセージカード、さらには宛名ラベルの配置まで、お客様の印象を左右する要素が数多く存在します。
たとえば、私たちの店舗では、商品に合わせたラッピングの色を選び、メッセージカードにはスタッフの手書きコメントを添えるようにしています。
また、雨の日の配達を想定し、防水用の内袋を使うなど、機能面にも配慮しています。
こうした工夫は「開封の瞬間」を特別な体験に変えます。
レビューやSNSで「開けた瞬間に感動した」と書いていただけるのは、この“最後の細部”が伝わった証拠だと感じています。
競合との違いをどうつくるか

現在の小売市場では、ほとんどの商材がECを通じてどこでも手に入る時代になりました。
そうなると、「何を売っているか」よりも、「どんな体験としてそれを提供しているか」が重要になります。
つまり、商品の価格やブランド力だけではなく、“その商品をどこで・誰から買うか”に価値が生まれているということです。
では、セレクトショップが競合と差をつけるためには、どのような点で独自性を発揮できるのでしょうか。
以下に3つの視点から掘り下げてみます。
同じ商材でも「体験の質」で勝負
扱っている商品が同じであっても、「どのように見せ、どう届けるか」でまったく違う価値が生まれます。
たとえば、実店舗であれば照明の当て方ひとつで商品が輝き、スタッフとの会話から“自分に必要な一着”として納得して購入いただけることもあります。
ECサイトでは、写真の枚数やクオリティが重要です。
ただの「商品画像」ではなく、実際の着用感が伝わるカットや、身長別の着用例、素材のアップなどを掲載することで、お客様が安心して購入できる環境をつくることができます。
私の店舗でも、お客様から「ここの写真はリアルで参考になる」と言っていただけることが多く、他店との差別化に繋がっていると感じています。
また、商品説明の文章も大きな差別化要素です。
単なるスペック列記ではなく、「この服が生まれた背景」や「どんなシーンで使えるか」を想像できるストーリーを盛り込むことで、商品の価値をより深く伝えることが可能になります。
顧客との関係性を深めるコミュニケーション
競合と差がつくのは「商品」よりも「関係性」によってです。
リピーターのお客様がついてくださる理由は、商品以上に「この店は自分のことをわかってくれている」「スタッフと価値観が合う」といった心理的な安心感や親近感にあります。
たとえば、当店では顧客カルテを簡易的に記録し、以前の購入履歴やサイズ感のフィードバックを参考にしながら、新商品をご案内しています。
そうすることで「なんでこれが私に合うって分かったんですか?」と驚かれることもあり、信頼関係の構築に繋がっています。
また、Instagramやブログなどを通じた情報発信でも、「売る」ことを目的にしすぎず、「一緒にファッションを楽しむ仲間としての視点」で綴ることで、共感を得ることができると感じています。
お客様と日常的に“つながっている感覚”を育てていくことが、長期的なブランド力になります。
小さなこだわりがリピートに繋がる理由
人は“違い”よりも“違和感のなさ”に好感を持つ生き物です。
つまり、細かな配慮や、説明しなくても伝わるこだわりが、お客様に「なんか、ここは気持ちいい」と思わせる要素になります。
たとえば、梱包の仕方が毎回丁寧だったり、タグの糸のカットが揃っていたり、明細書の文字組みが読みやすかったり──そんな小さな違いの積み重ねが、「またこの店で買いたい」というリピート動機になります。
重要なのは、それらのこだわりを声高にアピールしないこと。
あくまで“伝わってしまう”レベルにまで昇華されていることが理想です。
自己満足で終わらず、結果としてお客様の満足に繋がっているか。
その検証と改善の繰り返しが、他店には真似できない“空気感”を生み出します。
「伝わらないこだわり」に意味はあるのか?

セレクトショップを経営していると、「ここはこだわっている」と胸を張って言いたくなる部分が多々あります。
しかし、それが果たしてお客様に“伝わっているか”という視点を忘れると、そのこだわりはただの「自己満足」で終わってしまう恐れがあります。
もちろん、商売において自分自身が納得のいく仕事をすることは大切です。
しかし同時に、お客様に価値として“感じてもらう”工夫がなければ、それは「無言の努力」で終わり、差別化にはなりません。
ここでは、伝わらないこだわりの危うさと、自然に伝わるための仕掛けづくり、そして体験を通じて伝える重要性について考えてみます。
自己満足で終わる危険性
どれだけ丁寧に仕入れをしても、空間を整えても、接客に時間をかけても、それが“伝わっていない”のであれば、意味が半減してしまいます。
たとえば、「手書きのメッセージを添えているけれど、読まずに捨てられてしまう」「香りにこだわってディフューザーを選んだのに気づかれない」──こういったことは、現場ではよくある話です。
問題は、こだわりがあることではなく、それを“伝えようとしないこと”にあります。
つまり、自己満足とお客様の満足の境界線を見極める視点が欠けてしまうと、ただの“過剰品質”になってしまい、かえって効率を落とす結果になりかねません。
“いい仕事をしているのに伝わらない”という状況は、職人肌の経営者にとって特につらいものです。
しかし、そこに一歩踏み込んで、「どうすれば伝わるか」を考えることで、その努力はようやく“価値”として認識され始めます。
自然と伝わる“仕掛け”の必要性
こだわりは、押しつけがましく語るものではありません。
あくまで“自然に伝わってしまう”ように仕掛けるのが理想です。
では、どうすればそれが可能になるのでしょうか。
ひとつは「物語をつくる」ことです。
たとえば、「このディスプレイは○○という空間デザイナーの提案を参考にしています」や、「この服はデザイナーが実際に○○地方を旅して得た着想から生まれました」など、こだわりの背景にある“ストーリー”を共有することで、お客様の感受性が自然と開かれます。
また、SNSやブログ、店内の小さなPOPを通じて、さりげなく情報を発信するのも有効です。
店員の何気ないひとことや、パッケージに忍ばせたひと工夫が、伝わる仕掛けになります。
伝え方を工夫することで、こだわりは押しつけにならず、自然な納得感としてお客様の中に浸透していくのです。
言葉で伝えるのではなく、体感で伝える
“伝える”という行為には、「説明する」以外のアプローチもあります。
むしろ、言葉よりも強力なのが「体験を通じて伝える」ことです。
たとえば、服を手に取った瞬間の質感や重み、着用時のシルエット、試着室の照明や空間の静けさ──それらの積み重ねが「この店、なんかいいよね」という体感に繋がります。
ECであれば、開封の瞬間や、商品が届いたタイミングでのちょっとした驚きが、言葉を超えて印象に残るポイントになります。
また、「説明がいらないほど自然に伝わる」設計を意識することも大切です。
美術館やカフェ、ホテルのように、感性で感じ取ってもらえる空間やサービスが理想です。
そのためには、常に“お客様の立場で感じること”が欠かせません。
こだわりが“伝わってしまう”店づくりとは

良いお店とは、説明しなくても「何かが違う」と感じていただける場所です。
接客やディスプレイ、香りや音楽、商品のセレクトやSNSの投稿にいたるまで、店を構成するすべての要素が「一貫した空気感」をまとっている──そんな店舗には、お客様が自然と惹きつけられ、また足を運びたくなります。
こだわりは語るものではなく、感じていただくもの。
言葉にせずとも“伝わってしまう”状態を目指すことで、競合には真似できない「店の人格」が立ち上がってきます。
ここでは、その具体的な構造と工夫について掘り下げてみます。
お客様が「感じてしまう」違和感のなさ
店に入った瞬間、「なんだか落ち着く」「なんか好き」と感じることはありませんか?
それは、視覚・聴覚・嗅覚・触覚に至るまで、五感のすべてにおいて「違和感がない」空間設計がなされているからです。
服の並べ方、ライティング、床材の質感、BGMの音量、香りのトーン──それぞれは小さな要素ですが、それが調和していると、違和感のない“気持ちよさ”が生まれます。
そして、その気持ちよさは「このお店はなんか好き」といった、感覚的な好印象につながります。
逆に言えば、どれかひとつが浮いていたり、やりすぎていたりすると、お客様は無意識に違和感を覚え、その店舗全体の印象にも影響を与えかねません。
統一された“空気感”が、こだわりを自然に伝える最大の要素と言えるでしょう。
ブランド哲学と空間・人・サービスの一貫性
「このお店らしいね」と言っていただけるようになるためには、ブランドの哲学や美意識がすべての接点に貫かれている必要があります。
商品セレクトの基準、スタッフの接客マナー、SNSの言葉遣い、店舗の照明設計──すべてが同じ価値観の上に成り立っていることが理想です。
たとえば「本質的な価値を大切にする店」であれば、トレンドに流されすぎた商品や過度な装飾は避け、シンプルで上質な空間づくりを意識する。
スタッフも「売る」より「導く」姿勢を大切にし、セールスライクな言葉を控えるなど、細部にまで哲学を落とし込んでいく必要があります。
そのような一貫性があるからこそ、こだわりは説明不要で伝わっていきます。
一つの価値観で統一された“体験の設計”こそ、セレクトショップの真の強みとなります。
リピート率・口コミ・信頼が生まれる構造
「なんか良いお店だったな」という感覚は、お客様の中に“記憶”として残ります。
その記憶が再訪や購入につながり、リピート率が上がっていきます。
そして、その満足感はSNSや口コミを通じて自然と広がっていきます。
当店でも、「村長さんのところで買うと、なんか安心するんです」と言っていただけることが増えました。
これは、価格や商品以上に“体験”を買っていただいている証だと受け止めています。
さらに、そうした信頼は積み重なってブランドの「信用力」になり、新規顧客の来店障壁を下げてくれます。
広告に頼らずとも自然な紹介が増えることで、持続可能で強い経営基盤をつくることができるのです。
実体験から語る「細部が顧客を惹きつけた瞬間」

ここまで「細部に宿る神」の考え方を、小売業やサービス業に置き換えて考察してきましたが、最も説得力を持つのはやはり“現場での実体験”です。
セレクトショップを十数年運営してきた中で、私自身が体感した「細部が顧客の心を動かした瞬間」をいくつかご紹介します。
些細な取り組みでも、それが蓄積されることで信頼となり、結果として売上やリピート率に繋がっていく──そんな事例を共有できれば、これからお店づくりに向き合う方の参考にもなるかと思います。
自店舗で起きた印象的な出来事
ある日、お一人のお客様がご来店されました。
入店されてから5分も経たずに、「この商品、ECサイトで見て決めてきました。サイズだけ試させてもらえますか?」と。
その方は、試着後すぐにご購入され、お会計を済ませてすぐにお帰りになりました。
通常、アパレル店舗では一定時間の滞在やスタッフとの会話があるものですが、このお客様は事前に十分な情報を得た上で、目的を持ってご来店されたのです。
その背景には、当店がECサイトに掲載している「豊富な在庫情報」「着用画像」「サイズ感の丁寧な説明」など、細部まで気を配ったコンテンツ作りがあります。
つまり、リアル店舗の接客以前に、ECサイトでの“顧客体験”が完結していた。
これは、まさに細部へのこだわりが「事前の信頼」となり、来店・購入という行動に繋がった好例でした。
細かな工夫が口コミにつながった事例
当店では、商品写真はすべて自社で撮影し、背景・光のあたり方・服の動き方まで一枚一枚こだわっています。
さらに、商品説明文もメーカーの提供文をそのまま使うことはせず、実際にスタッフが着用した感想やスタイリングのポイントを交えて書いています。
一見、非効率な作業かもしれません。
しかし、この“独自性”が顧客の心に届くことは多く、SNSでは「説明文が参考になる」「モデルの体型が自分に近くて選びやすい」といった感想が寄せられています。
また、商品ページの導線も「他のサイズ」「色違い」「類似アイテム」が自然と見つかる設計にし、迷わず購入にたどり着けるよう工夫しています。
こうした細かなUI/UXの改善も、レビューや口コミで高評価につながっており、新規顧客の獲得にも貢献しています。
小さな差が売上に直結した経験
創業以来、当店は一貫して「丁寧な情報提供」と「五感に訴える店づくり」を心がけてきました。
流行を追いすぎることなく、また価格競争に巻き込まれることもなく、地道に信頼を積み重ねる道を選んできました。
結果として、年々リピーターが増え、売上は創業以来右肩上がりを維持しています。
広告費を多くかけることもなく、特別なキャンペーンに頼ることも少ない中で、この成長が実現できているのは、やはり「細部」にこだわり続けてきたからだと実感しています。
お客様にとっては些細な違いでも、それが積み重なることで「他の店では得られない体験」になり、最終的にはファンになっていただける。
小さな差が、大きな成果を生む──それを肌で感じた経営の軌跡です。
まとめ

日々の営業のなかで見過ごされがちな「細部」ですが、それこそが実は、他店と最も大きく差がつくポイントだと感じています。
特別な設備や多額の広告費がなくても、「違和感のない体験」「心地よい空気感」「共感を呼ぶ哲学」を体現できる店は、確実にお客様の記憶に残ります。
今や、商品の仕入れや価格だけで差別化を図るのは難しくなっています。
だからこそ、細部へのこだわりが“価値”となって伝わる時代に、私たちセレクトショップは生き残っていく道を見出す必要があります。
「細部」こそが最大の差別化ポイント
同じ商品、同じ価格帯であっても、そこに込めたストーリー、空間、接客、発信のトーンが違えば、顧客体験はまったく異なるものになります。
つまり、細部に宿るこだわりこそが、競合との最も明確な違いを生む“差別化”の源泉なのです。
お客様はそれを「言語化」はしませんが、確実に“感じて”います。
そして、その感覚こそが「このお店で買いたい」と思っていただける理由になります。
今一度見直すべき「お店の当たり前」
私たちは日々のルーティンのなかで、「これが当たり前」と思っているオペレーションや表現に慣れてしまいがちです。
しかし、お客様から見たときに、それは本当に快適で、心地よく、魅力的なものになっているでしょうか?
商品の並べ方、接客時の言葉遣い、ECサイトの商品説明、梱包方法──あらゆる場面で、「もっと伝えるにはどうすればいいか」「もっと感じてもらうにはどう見せればいいか」を、今一度点検してみることが必要です。
感じさせる努力が、結果として伝わる
「伝える」のではなく、「感じさせる」。そのためには、説明を超えた“体験”としてお客様に届くよう、あらゆるタッチポイントを磨き続ける努力が求められます。
自らのこだわりをひけらかすのではなく、あくまで自然体で“伝わってしまう”ような設計。
その姿勢こそが信頼を生み、リピーターを生み、やがてブランドとしての重みを形成していきます。
細部への配慮は、見えるところだけでなく、見えない部分にも魂を込める行為。
神は、たしかに細部に宿っています。
だからこそ、私たちの商いもまた、細部から美しくあらねばならないと、日々感じています。
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