
メルカリShopsを活用して商品を販売していると、ありがたいことに「この商品とあの商品をまとめて購入したいのですが…」というお問い合わせをいただくことがあります。
特に、メルカリが期間限定でクーポンを配布しているタイミングでは、まとめ買いを希望されるお客様も多く、店舗としても売上チャンスと捉えたくなる場面です。
しかし、現状のメルカリShopsでは複数商品を同時に購入する「カート機能」が存在しないため、まとめ買いに対応するには一時的な専用商品ページを作成するなどの対応が必要になります。
この運用が積み重なると、在庫のズレや事務作業の煩雑化といった課題が表面化してきます。
本記事では、私自身のセレクトショップでの経験をもとに、「なぜ当店ではまとめ買い対応をしていないのか」、そして「メルカリに今後改善してもらいたいポイント」について整理してお伝えしていきます。

メルカリに今後改善してもらいたい「まとめ買い機能」について書きました。
メルカリShopsにおける購入の仕様

メルカリShopsは、フリマアプリ「メルカリ」内で商品販売ができるECプラットフォームとして、個人・法人問わず多くの出品者に利用されています。
スマートフォンひとつで始められる手軽さや、既存のメルカリ利用者(=購入見込み客)へのリーチ力は非常に魅力的です。
しかしながら、現時点でのメルカリShopsの仕様にはいくつかの制約があります。
その中でも店舗運営者にとって悩ましいのが、「複数の商品をまとめて購入することができない」という仕様です。
これは販売者だけでなく、購入者にとっても不便さを感じさせる部分であり、日常的に問い合わせが寄せられる原因にもなっています。
複数商品をまとめて注文できない理由

メルカリShopsには、他のECモール(楽天市場やBASEなど)で一般的に用意されている「ショッピングカート機能」が存在しません。
つまり、複数の商品を同時にカートに入れて一括で決済するということができず、購入者は1商品ごとに注文・支払いを完了する必要があります。
この仕様の背景には、メルカリが本来フリマ形式での取引を想定した設計であるという点があると思われます。
個人対個人の取引をベースにしているため、1対1の販売が前提になっており、複数商品の一括購入はサポートされていません。
その結果として、「複数の商品を一度に買いたい」というニーズに対して、出品者側が臨機応変な対応を求められる場面が増えてしまっているのです。
公式が発行するクーポンとの関係

さらにややこしいのが、メルカリ公式が定期的に発行している「割引クーポン」や「送料還元クーポン」の存在です。
これらのクーポンは通常、1回の注文に対してのみ利用可能であり、複数商品を別々に購入する場合にはすべてに適用されるとは限りません。
そのため、「クーポンを使いたいので、●●と■■をまとめたページを作ってくれませんか?」という要望が届くことも少なくありません。
お客様の気持ちはよくわかりますし、当店としても可能なら応えたいという思いもあります。
しかし、毎回のように「まとめ商品ページ」を個別に作成し、在庫調整を行っていくことは現実的ではなく、結果として在庫管理のズレやトラブルの元になることもあります。
お客様からよくある問い合わせ

メルカリShopsを運営していると、日々さまざまなお問い合わせが届きます。
その中でも特に多いのが「複数の商品をまとめて買いたい」というリクエストです。
当店のように一点物のセレクトアイテムを多く扱っている店舗では、組み合わせを重視してご購入を検討されるお客様も多く、まとめ買い希望の問い合わせはむしろ好意的なサインと受け止めています。
しかし、前述のとおりメルカリShopsには「カート機能」がないため、お客様のご要望にそのまま応じるのが難しい場面も少なくありません。
ここでは、実際に寄せられる具体的なリクエスト内容や、店舗側として判断を迫られる対応事例についてご紹介します。
「まとめ買いしたい」というリクエスト

お客様からの問い合わせで多いのが、「このジャケットと、そちらのパンツを一緒に買いたいのですが、まとめて購入できるようにしてもらえますか?」といった内容です。
特にスタイリング提案を意識した品揃えをしている店舗では、アイテム同士の相性を見て一度に購入したいというニーズは自然な流れといえるでしょう。
中には「メルカリのクーポンを使ってお得に買いたい」という理由で、まとめ買い希望の連絡をくださる方もいます。
こうした問い合わせは、販売者側としても「ありがたい」と思う反面、システム上の制約によって思うように対応できないジレンマがあります。
店舗側が受ける対応依頼の実例

実際に受けた対応依頼の一例を挙げると、以下のようなケースがあります。
このようなリクエストに対応するには、在庫調整や個別の商品説明の修正、発送手続きの確認など、裏側の作業が発生します。
さらに、専用ページ作成後にお客様が購入しなかった場合、そのまま商品が“在庫ズレ”の状態になってしまうリスクもあります。
こうしたことから、当店では現在「まとめ買いページの個別対応は行わない」という方針を取っています。
お客様に対してはその理由を丁寧に説明し、ご理解いただけるよう努めています。
当店が「まとめ買い対応」をしない理由

お客様からの「まとめて買いたい」というご要望にすべて応えることができれば、売上アップにもつながるかもしれません。
しかし、店舗運営には限られた人員と時間、そして管理の正確さが求められます。
一見すると小さな柔軟対応のように思えるまとめ買いへの対応ですが、日常業務の中で繰り返されることで、在庫の精度や発送の信頼性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当店では、長期的にお客様との信頼関係を築くうえで、安定した運営体制を最優先にしているため、あえてまとめ買いには対応しないという判断をしています。
在庫ズレのリスクと信頼への影響

もっとも大きな理由は、「在庫ズレ」のリスクです。
たとえば、お客様から「AとBをまとめて買いたい」というリクエストがあった場合、専用ページを作るにはAとBの在庫を一時的に非公開にする、あるいは在庫数を調整する必要があります。
しかし、この操作を行っている間に、別のお客様が通常の出品ページから購入してしまうと、重複販売や在庫切れが発生します。
これにより「ご注文後に在庫がありませんでした」とお詫びを入れる羽目になり、店舗としての信用が大きく損なわれます。
また、在庫の数がズレた状態で他のプラットフォームや実店舗と在庫を共有している場合、全体の在庫管理にも支障が出てしまいます。
特に当店のように複数チャネルで販売しているショップにとっては、こうしたズレは命取りになりかねません。
個別対応による業務負担の増大

もう一つの大きな理由は、業務負担の増加です。
専用ページの作成、在庫調整、商品説明文の再作成、価格の調整、発送方法の確認──これらの業務をすべて個別に行っていると、通常業務のスピードが著しく低下します。
仮に1日に数件のまとめ買い対応が発生すると、スタッフの手が取られ、本来注力すべき接客や商品管理、販促活動が後回しになってしまいます。
小規模店舗にとっては、こうした「例外対応」の積み重ねが命取りになることもあります。
その結果、ミスや対応遅れといった新たな問題が生じ、かえってお客様の満足度を下げてしまう──こうしたリスクを避けるために、当店ではあらかじめルールを明確にし、原則として個別のまとめ買い対応は行っておりません。
メルカリに望む改善ポイント

メルカリShopsは、出品から発送までをスマートに完結できる優れたプラットフォームであり、多くの個人・小規模事業者にとって心強い販売チャネルです。
しかし、事業として本格的に運用していくと、どうしても「もう一歩の機能が欲しい」と感じる場面があります。
特に、今回のテーマである「まとめ買い対応」については、メルカリの側でシステム的に解決できる部分が多く、出品者としてはぜひ改善を期待したいところです。
ここでは、日々の運営のなかで感じている具体的な要望を2点に絞ってご紹介します。
カート機能の導入希望

最も要望が多く、かつ出品者としても必要性を強く感じているのが「カート機能」の導入です。
複数の商品を1つの注文にまとめて購入できる仕組みがあれば、お客様の利便性は飛躍的に向上し、販売者側も在庫調整や発送の手間を大幅に軽減できます。
これは単に「便利になる」だけでなく、売上にも直結する改善です。
お客様が「ついで買い」しやすくなることで、客単価の向上が期待でき、キャンペーンやクーポン施策との連動もしやすくなります。
メルカリはもともとフリマアプリとしてスタートしているため、1対1の個別取引が基本設計となっていますが、メルカリShopsという法人・事業者向けの機能がある以上、BtoCの取引スタイルにも柔軟に対応する設計が必要ではないかと感じます。
お問い合わせの自動返信機能の充実を望む

もう一つ、現場で強く感じるのは「お問い合わせ対応の負担」です。
メルカリShopsでは、お客様とのやり取りがすべて個別メッセージで行われるため、営業時間外や対応が立て込んでいるときでも、返信が遅れることが避けられません。
特に「まとめ買いできますか?」「クーポンは使えますか?」「サイズ感はどうですか?」といった、よくある定型的な質問に対して、毎回手動で返信をするのは時間的にも精神的にも大きな負担となります。
そこで、メルカリ側にぜひ実装していただきたいのが「自動返信機能」です。
たとえば以下のような機能があると非常に助かります。
こうした自動応答機能があるだけで、出品者は安心して通常業務に集中でき、購入検討中のお客様も「返事がない=放置されている」と感じることがなくなります。
特にセレクトショップのように接客品質を重視する店舗では、「問い合わせへの対応スピード」も信頼の一部です。効率的な運営と、安心感ある顧客対応の両立のためにも、自動返信機能の強化はぜひお願いしたいポイントのひとつです。
同業者の皆さまへ

メルカリShopsなどのプラットフォームでの販売は便利ですが、仕様上の制約からお客様の要望にすべて応えきれないこともあります。
対応できる範囲であればもちろん応じるのが理想ですが、無理に対応してストレスをためてしまうのは避けたいところです。
むしろ、自店舗にとって無理のない運営方法やストレスのない対応方法を模索することが、長く安定して経営を続けるためには大切だと考えます。
対応ルールを明確にし、スタッフ全員が共有できる体制を整えることも、結果的にお客様との信頼関係を守ることにつながります。
「断る判断」も大切な経営判断

お客様からの要望にすべて応えようとするあまり、無理な対応を続けることは、長い目で見れば店舗のブランド価値や運営の安定性を損なうリスクがあります。
時には「対応できかねます」と断る勇気も必要です。
断る際には、丁寧かつ誠実な説明を添えることで、お客様の理解を得やすくなります。
また、その判断を社内でも共有し、スタッフ全員が一貫した対応を取れるようにすることが信頼維持には欠かせません。
プラットフォーム任せにしすぎない姿勢

メルカリShopsなどのプラットフォームは、販売チャネルとして便利な反面、すべての運営課題を解決してくれるわけではありません。
仕様上の制約や機能不足はどうしても存在します。
だからこそ、プラットフォームに頼り切るのではなく、自店舗独自の運用ルールや顧客対応方針を持つことが重要です。
たとえシステム上の不便があっても、どのように運用するかでお客様の満足度は大きく変わります。
不便を感じたら「仕方ない」と諦めるのではなく、改善案を出し合いながら、店舗の強みを活かした工夫を続けていきましょう。
まとめ

メルカリShopsにおける「複数商品まとめ買い不可」の仕様は、店舗運営者にとってさまざまな課題をもたらします。
お客様からのニーズは高いものの、対応による在庫ズレや業務負担の増大は無視できません。
私たちセレクトショップ経営者は、販売チャネルの制約を理解しつつも、安定した運営を優先する判断を求められています。
本記事を通じて、同業の皆さまが「対応できないことを断る勇気」や「プラットフォームに依存しすぎない独自の運用ルール作り」の重要性を再確認いただければ幸いです。
店舗運営者としてブレない軸を持つ

経営者として、日々変わる顧客要望やプラットフォームの仕様変更に振り回されるのではなく、自店舗の運営方針や対応ルールにブレない軸を持つことが不可欠です。
その軸があれば、不要なトラブルや過剰な業務負担を防ぎ、長期的な信頼構築につながります。
今後の販売チャネル戦略を見直す機会に

また、今回のメルカリShopsのまとめ買い問題をきっかけに、改めて自社の販売チャネル戦略を見直す良い機会にもなります。
複数チャネルの強み・弱みを理解し、ECサイトや実店舗とのバランスをとりながら、多角的な販売体制を整えていくことが重要です。
こうした視点を持つことで、不測の事態にも柔軟に対応できる、強い経営基盤を築いていきましょう。

少しずつではありますが、メルカリshopsの機能面の改善も進んでいるように感じます。
今後さらに使いやすい環境へと進化していくことを期待しています。
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