
事業を続けていると、いつか必ず「この仕事を子供に継がせるべきか」というテーマに向き合う瞬間が来ると感じています。
セレクトショップは一見すると華やかで、私自身もやりがいを持って取り組んできました。
しかし同時に、アパレル業界は流れが非常に速く、数年前まで繁盛していた店舗が突然姿を消すことも珍しくありません。
実際、近隣でも好調だったお店が気づけば倒産していたり、仕入れ先ブランドの取扱店一覧を見ても「この店なくなったな」と思うことが少なくありません。
私の店舗は今のところ順調ですが、正直なところ「10年後も同じように続けられているか」と聞かれると、自信を持って「はい」とは言えません。
そのため、親として子供に継承させることには期待と同じくらいの不安も存在します。
それでも、事業を通じて身につけたECの知識やスモールビジネスの戦い方など、“環境が変わっても役に立つ力”は確実にあります。
だからこそ、「事業そのものを継がせる」のではなく、「選択できるだけの知識と経験を渡す」、そんな形を目指したいと考えています。
事業継承というテーマに向き合う

事業を長く続けていると、日々の売上や運営だけではなく、「この仕事を次の世代にどうつなげるか」という視点も少しずつ意識するようになります。
特に家族経営の場合、子供が成長するにつれて「もし興味を持ってくれたら継がせてもいいのか?」と考える機会が増えます。
一方で、事業を継ぐというのは単なる就職先を選ぶこととは違い、その人の人生そのものに大きな影響を与えます。
だからこそ感情だけでは決められず、冷静な判断が求められます。
子供に継がせるべきか迷う理由
親としては、自分が築いてきたものを子供に残せたら理想的だと思う瞬間もあります。
しかし、事業は「安定した資産」ではなく「常に変化が求められる生き物」のような存在です。
継がせることで子供の人生の選択肢を広げられる一方、逆に選択肢を狭めてしまう可能性もあります。
また、自分が情熱を持って続けてきた事業でも、子供が同じように情熱を持てるとは限りません。
“継がせたい気持ち”と“無理に継がせるべきではないという考え”の間で揺れることが、このテーマの難しさだと思います。
アパレル業界の不安定さと将来性
さらに、セレクトショップという業態は特に時代の流れに左右されやすいビジネスです。
トレンドの移り変わり、ブランド側の戦略変更、ECやSNSの台頭、配送コストの上昇など、外部要因だけでも大きな変化が頻繁に起こります。
過去を振り返ってみても、好調だった店舗が数年で姿を消すケースは珍しくありません。
「今は順調でも、10年後に同じ戦い方で生き残れるのか?」と考えると、継承を前提にした長期的な計画を立てることは簡単ではありません。
この不確実性こそが、事業継承を迷わせる最大の理由の一つです。
親として感じる責任と葛藤

事業を継承するかどうかは、単なるキャリアの話ではなく「家族の将来」と深く結びついたテーマです。
親として子供の人生に良い影響を与えたい一方で、事業を背負わせることが本当に幸せにつながるのかと考えると、慎重にならざるを得ません。
自分の経験を活かしてサポートできるという安心感と、プレッシャーを与えてしまうかもしれないという不安。
この両方の感情が入り混じることで、継承の判断はさらに複雑になります。
現在は順調でも10年後は分からない
私の店舗は今のところ安定して利益を出せていますし、仕入れや在庫管理の精度も年々高まっています。
しかし、正直なところ「この状態が10年後も続いている」とは言い切れません。
アパレル業界は景気やトレンド、ECプラットフォームのルール変更など、外部要因で一気に状況が変わることもあります。
数年先であればある程度の見通しが立ちますが、10年というスパンになるとまったく別の業界構造になっている可能性すらあります。
自分自身が続けられるかどうかすら不透明な中で、「子供に託す」という決断をするのは簡単ではありません。
過去の近隣店舗から学ぶリスク
実際に、私の周りでもかつては繁盛していた店舗がいつの間にか閉店しているケースを何度も見てきました。
取り扱っているブランドの取扱店一覧を見ても、「この店、なくなったんだ」と気づくことが珍しくありません。
一時的に好調でも、数年後には経営が立ち行かなくなる――これがこの業界の現実です。
そうした現場を見てきたからこそ、「勢いだけで子供に継がせるのは危険だ」と強く感じています。
事業を守ることの難しさを知っているからこそ、継承には慎重にならざるを得ないのです。
子供に残せる“事業”ではなく“力”

私は、事業そのものを無理に子供へ引き継がせるよりも、「どこでも生きていける力」を渡すことの方が価値があると考えています。
セレクトショップという形は時代によって変わるかもしれませんが、ECの運営スキルやスモールビジネスの戦い方、数字の見方、仕入れと販売のロジックなどは、どんな業界に行っても必ず役に立ちます。
つまり、“店を継ぐこと”がゴールではなく、“選択肢を持てる人間になること”こそが、本当の意味での継承だと思っています。
ECスキルやスモールビジネスの知識を伝える
私はこれまで、仕入れ・在庫管理・ECサイト運営・顧客対応・会計・税務など、ひと通りの業務を自分でこなしてきました。
この経験は、大企業では学びにくい「小さなビジネスで利益を出すための実践スキル」です。
たとえ将来、子供が全く別の仕事を選んだとしても、これらのスキルは副業や独立、フリーランスとしても活かせるはずです。
だからこそ、私は事業のやり方を“教える”のではなく、「なぜそう判断するのか」という“考え方”を伝えていきたいと思っています。
最終的な選択は子供自身に任せたい
正直に言えば、私は子供にこの事業を継いでほしいとはあまり思っていません。
なぜなら、この業界の厳しさやプレッシャーを身をもって知っているからです。
親としては「もっと安定した道があるのでは?」と感じてしまうのが本音です。
しかし不思議なことに、子供はときどき「大きくなったら店を継ごうかな」と、何気なく口にしてきます。
その言葉を聞くと、嬉しさと同時に不安も湧いてきます。
「本気で言っているのか?」「親の姿を見て“楽しそう”とだけ感じているのでは?」と、複雑な気持ちになる瞬間です。
だからこそ私は、「継がせるかどうか」を今決めるつもりはありません。
これから時間をかけて、仕事の現実もやりがいも、良い面も厳しい面もすべて伝えた上で、最終的には子供自身に判断してもらいたいと思っています。
事業を残すことが目的ではなく、「自分の人生を自分で選べる力」を渡すこと。
それが、親としてできる一番の継承ではないかと感じています。
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