
今年も残り2カ月となりました。
1月から10月までの業績が大まかに出揃い、いよいよ年の瀬を感じる時期です。
数字を眺めながら「今年もあっという間だったな」と、どこか寂しいような、一区切りのような気持ちになります。
ありがたいことに、今年の業績は順調です。
この運営日記でも何度か「好調」と書いてきましたが、最終的に確認すべきは売上ではなく「利益」です。
どれだけ売れても、在庫が積み上がってしまえば意味がありません。
小売業を続けていると、年末はどうしても数字と向き合う時期になります。
期首と期末の在庫金額、仕入れと売上のバランス、税金の見通し──。
これらを一つずつ整理しながら、淡々と、しかし確実に一年を締めくくっていく。
そんな時期が、またやってきました。
数字と向き合う季節

今年も残り2カ月となりました。
毎年この時期になると、気温の変化とともに、気持ちが少し落ち着いていくように感じます。
そして同時に、1年間の数字と真正面から向き合う時期でもあります。
会計ソフトを開きながら、売上・粗利・経費の動きを追っていくと、「あぁ、今年も終わりに近づいているな」と実感します。
不思議なもので、数字を見ていると感情も動きます。
思うように売れなかった月を悔しく思い、予想以上に反応が良かった月を誇らしく思う。
この仕事を長く続けていても、そうした感情の波はなくなりません。
むしろ、数字の奥にある「お客様の動き」や「仕組みの構築」を思い返す時間でもあり、静かに一年を振り返る、そんな季節だと思います。
1月から10月までを振り返って
1月から10月までを通して見ると、今年は総じて好調でした。
春先は商品の入荷が少なく、立ち上がりはややスムーズさを欠きましたが、春以降は想定以上に仕入れが進み、これが売上を伸ばした大きな要因となりました。
また、商品単価の値上がりにより客単価が上昇した一方で、購入客数は減少せず、むしろ伸びたことも売上増加につながりました。
秋冬の立ち上がりも安定しており、客数・客単価ともに堅調。
この10カ月を総括すると、春先に一時的な停滞はあったものの、その後は順調に推移し、大きなトラブルもなく穏やかな一年となりました。
ただ、どんなに順調でも「油断」は禁物です。
売上が好調な時こそ、数字の裏に潜む“リスク”を見落としがちです。
在庫の増減、粗利率の変化、固定費の膨らみ──。
日々の売上数字を眺めて安心するのではなく、利益構造を点検するのがこの時期の大切な仕事です。
売上よりも大切な「利益」を見る
小売業の現場では、どうしても「売上」という言葉が主役になりがちです。
しかし、事業を続けていくうえで本当に大切なのは、最終的にどれだけ利益が残るかです。
数字を見慣れていない頃は売上が伸びることに満足していましたが、経験を重ねるうちに、利益を見なければ意味がないと強く感じるようになりました。
仕入れを増やしすぎると在庫金額は増えますが、キャッシュは減ってしまいます。
在庫は利益にカウントされるため、数字上は利益が出ているように見えるのですが、実際は手元に現金がない状態。
こうなると、倒産のリスクが高まります。いわゆる「黒字倒産」というやつです。
結局のところ、経営とは「数字のバランス」を整える仕事です。
売上・利益・在庫・キャッシュ──どれか一つでも偏れば、事業のリズムは崩れてしまいます。
だからこそ、年末に数字としっかり向き合うことが、来年を安定して迎えるための準備になるのだと思います。
期末在庫が決算を左右する

小売業において、年末の数字で最も重要なのが「期末在庫金額」です。
帳簿上の売上や仕入れももちろん大事ですが、最終的な利益を決めるのは、期首と期末の在庫金額の差です。
この仕組みを知らずに事業を続けていると、思わぬ税金の跳ね返りを受けることがあります。
在庫が多く残った年は、所得が増えて税金が上がる。
逆に在庫が少なくなれば所得が減り、税金は下がる。
見た目の売上や利益とは別に、在庫の数字が実質的な所得を動かしているのです。
棚卸在庫の金額が所得を動かす仕組み
会計上、仕入れた商品は「経費」にはなりません。
実際に売れたときに初めて「売上原価」として経費化されます。
そのため、期末に商品が多く残っているほど、その分だけ経費が認められず、所得が増える仕組みです。
例えば、期首の在庫が500万円、期末の在庫が700万円なら、差額の200万円分は「売れていない=経費にならない」ため、所得が200万円増える計算になります。
単純な数字のように見えて、実はこの200万円が税金・保険料・翌期の資金繰りに大きく影響します。
そのため、12月にどの程度売上を作るか、仕入れをどこまで抑えるか──。
年末の2カ月間は「売上と在庫のバランス」を見極める非常に大事な期間になります。
売れすぎても、売れなさすぎても難しい
理想としては、期首と期末の在庫がほどよく揃っている状態、もしくは微増くらいが望ましいです。
しかし、実際には思い通りにはいきません。
例えば、12月に想定以上に売れて在庫が大きく減った場合、所得金額が下がるため税金の負担は一時的に軽くなるかもしれません。
ただし、翌年の期末在庫金額が高くなると、税金の負担は逆に大きくなってしまいます。
具体的には、期首の在庫が1000万円、期末の在庫が700万円なら翌年の税金は下がりますが、翌年の期首在庫が700万円で期末在庫が1200万円になった場合、差額500万円に対して税金がかかることになります。
事業が成長しているのであれば、在庫金額も自然に増えていくのは当然のことです。
「売れすぎても困る」「売れなくても困る」。
数字だけを見ればシンプルですが、実際の経営は非常に繊細です。
在庫を調整しながらも、来期への準備を怠らない。
その両立ができるかどうかが、年末の腕の見せどころだと感じています。
どんなにシステムが進化しても、最終判断は人の感覚です。
売場の動き、顧客の反応、商品の鮮度──。
そうした“現場の温度”を数字に落とし込み、冷静に判断すること。
それが、年末に経営者が最も集中すべき仕事ではないかと思います。
適正在庫を探る終盤戦

数字と向き合う時間が増えるほど、「正解のない世界だな」と感じます。
小売業の在庫管理には、明確な答えがありません。
過剰に在庫を抱えればキャッシュが減り、在庫を絞りすぎれば売上機会を逃す。
そのちょうど中間を探し続けるのが、私たち経営者の仕事です。
この「適正在庫」の感覚は、データだけで導けるものではありません。
過去の経験、店頭の空気感、取引先との関係、そしてお客様の購買動向。
それらすべてを加味した“感覚的な経営判断”が必要になります。
だからこそ、年末に数字と向き合うことは単なる会計作業ではなく、自分の感覚が今どの方向を向いているかを確かめる作業でもあります。
期首と期末を揃えるバランス感覚
私は毎年、期首と期末の在庫金額をできるだけ安定させるよう心がけています。
以前は、期首と期末の在庫をほぼ同じにするのが理想だと考えていました。
しかし、物価高の影響で商品自体も値上がりしているため、現在は期末在庫が少し増える程度なら仕方がないと考えています。
単純に在庫金額を増やすと不良在庫が溜まりやすくなるので、それは避けつつ、回転の速い在庫を設定した範囲内でできる限り確保する──これが自分にとっての最適なやり方です。
もちろん、業界平均や他店との比較をすればもっと効率的な方法もあるかもしれません。
しかし、自分の店の規模、顧客層、仕入れの特性を考えると、“ちょうど良い”在庫水準は人それぞれです。
最終的に大切なのは、数字を見て自分が納得できるかどうか。
経営は他人の正解を追うものではなく、自分のバランスを整える営みだと思います。
今年も“いつも通り”で終わることを願って
11月は一年の終盤に差しかかり、静かに手応えを確かめる時期です。
派手な結果を求めるよりも、日々をいつも通りに積み重ねられることに価値を感じています。
売れすぎず、売れなさすぎず、例年通りのペースで淡々と進むこと。
それは一見平凡に見えても、安定して経営を続けられる証であり、次の挑戦へ向かうための基盤になります。
数字をまとめながら、改めて思うのは「経営の面白さ」と「難しさ」です。
数字は冷静で、時に厳しくもありますが、その裏には積み重ねた努力や選択の跡が確かに刻まれています。
一つひとつの結果を丁寧に受け止めながら、静かに日々を整えていく。
そんな落ち着いた11月を過ごしたいと思います。
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