
経営をしていると、どうしても「売上」に目が向きがちです。
月商や前年比を見て一喜一憂する日々の中で、意外と見落としがちなのが「現預金」の動きではないでしょうか。
私自身、以前は売上だけを見て経営状況を判断していた時期がありました。
しかし、ふと気づいたのは「売上が伸びているのに、手元資金が減っている」という事実。
気が付くと黒字倒産しそうな財務状況に陥っていました。
そこから毎月、月末時点での現金と預金、そして棚卸資産を記録するようになりました。
この記録が、経営の軌跡を「数字」で振り返る大切な資料となり、日々の意思決定にも役立っています。
今回は、そんな「月末の現預金記録」について、私の実践していることを少しだけご紹介したいと思います。
売上だけでは見えない経営の実態
日々の営業では、どうしても「売上」という数字が目立ちます。
月次の報告書、会計ソフトの画面、日々の入金確認——どれを見ても、つい売上にばかり注目してしまうのが経営者として自然なことかもしれません。
しかし、売上が上がっていても、なぜか資金繰りが苦しいという経験をしたことはないでしょうか?
私も過去に「前年比120%」という好成績を出していたにも関わらず、仕入れや支払いのタイミングが重なり、キャッシュが不足したことがありました。
そのとき気づいたのは、売上は「成績表」のようなものであって、「経営の体力」を示すものではないということです。
なぜ現預金の記録が必要なのか
現預金は、いわばお店の“血液”のようなものです。
売上がどれだけあっても、現金がなければ運転資金も回らず、次の仕入れにも踏み出せません。
つまり、現預金の把握は「生きた経営」を続けるために欠かせない視点です。
特に月末時点での現預金を毎月記録しておくことで、「今、手元にいくらあるのか」「昨年の同月比でどれだけ余力があるのか」といった現実的な判断が可能になります。
さらに、仕入れ過多や固定費の膨張など、キャッシュの減少要因を見つける手がかりにもなります。
売上に加えて、現預金という“体温”を測る習慣があるだけで、経営判断の精度はぐっと上がると実感しています。
月末に「手元資金」を確認する習慣
私の店舗では、毎月月末に「現金」「預金残高」「売掛金」「棚卸資産」など、運転資金に関わる数字を一覧で記録しています。
これを習慣化することで、資金の増減や資産構成の変化を可視化でき、翌月以降の動き方も具体的に描けるようになりました。
売上だけを見ていると「今月も順調だったな」と思えても、実際の資金繰りが圧迫されていることに気づかないまま、無理な仕入れや新規投資に踏み出してしまうこともあります。
だからこそ、月に一度立ち止まって、数字を見ておくことがとても大切だと感じています。
棚卸とあわせて資産全体を可視化
棚卸も、現預金の確認と並行して行うべき重要な作業です。
在庫は現金が姿を変えたものであり、事業にとっては「動かせないお金」でもあります。
月末に在庫金額を出すことで、流動性のある資産(=現預金)と、そうでない資産のバランスを知ることができます。
これを実践するには、日頃からコマめな記帳が欠かせません。
手元の帳簿や会計ソフトを、できるだけ実態に近い形で日々更新しておくことで、月末の数字が正確な「現状」を映す鏡になります。
特に個人経営のショップでは、こうした地味な作業の積み重ねが、そのまま経営の健全性に直結します。
毎月末のチェックが習慣になれば、数字に振り回されるのではなく、数字を使って経営判断ができるようになります。
過去の記録が「経営の地図」になる
日々の業務に追われていると、月末の数字を「集計して終わり」にしてしまいがちです。
しかし、それらの数字を継続的に記録し、蓄積していくことで、初めて見えてくるものがあります。
私は5年以上にわたり、毎月の現金・預金・棚卸資産の金額をエクセルでまとめてきました。
この記録が、事業の「航海図」のような存在になっています。
売上が急激に伸びた時期に、実際はキャッシュフローが苦しくなっていたこと。
逆に売上が横ばいでも、現預金が増えていた時期があったこと。
こうした流れは、1ヶ月や1年の単位ではなかなか見えてこないものです。
過去の記録と比較することで、今の状況が順調なのか、それともリスクを抱えているのかを冷静に判断できるようになります。
5年以上の記録で見える流れと兆し
数字を5年分積み上げてみると、「年単位の傾向」や「資金繰りのクセ」のようなものが浮かび上がってきます。
たとえば、毎年同じ時期に資金が減るなら、その原因を探し、事前に対策を講じることもできます。
また、在庫の増減と現預金の関係を見ることで、どのシーズンに仕入れ過多になりがちか、販売効率が良かった時期はいつか、といったことも把握できます。
こうした兆しは、短期的な感覚ではなかなか気づけません。
「記録」は地味な作業ですが、それを積み重ねることで、経営判断において非常に頼もしい味方になってくれます。
感覚ではなく数字に裏打ちされた判断ができるようになることで、経営の軸がぶれにくくなると実感しています。
まとめ 数字でしか見えない成長もある
セレクトショップの経営は、感覚や経験も大切ですが、それだけでは見落としてしまう「数字のサイン」があります。
売上が順調でも、現預金が減っていれば何かがおかしい。
逆に、売上が落ち着いていても資金が安定していれば、それは強い経営の土台ができているということかもしれません。
月末に現金・預金・棚卸資産を記録するという、たった数十分の習慣が、経営の輪郭をよりくっきりと浮かび上がらせてくれます。
そして、その積み重ねが「数字でしか見えない成長」を教えてくれるのです。
今月も月末が近づいてきました。
今日の手元資金は、明日の経営判断を支える大事な材料です。
忙しい中でも、ぜひ一度立ち止まって“数字”と向き合う時間を作るのも良いのではないでしょうか。
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