
セレクトショップを経営していると、長く売れ続けるブランドもあれば、ある時を境に売れ行きが落ちてしまうブランドも少なくありません。
販売データや店頭の反応を見れば、その変化ははっきりと感じ取れます。
アパレル業界では「一度売れなくなったブランドがV字回復する」という話はあまり聞きませんし、私自身も出会ったことがありません。
今回は、セレクトショップ経営者から見た売れなくなったブランドが再起する可能性と、そのために必要な条件について考えてみたいと思います。
売れなくなったブランドの現実

ブランドは常に変化の波にさらされています。
数年前まで主力だったブランドも、気づけば顧客の心から離れてしまうことがあります。
これはアパレル業界では決して珍しいことではなく、むしろ多くのブランドが通る道とも言えます。
一度勢いを失ったブランドが再び注目を集めるのは、想像以上に難しいのが現実です。
販売データが示す変化
自社の販売データを見れば、ブランドの調子は一目瞭然です。
リピート率の低下、売れ筋商品の失速、ECでの閲覧数やカート投入数の減少など、小さな兆候が積み重なっていきます。
さらに、競合ショップの仕入れ量や店頭での取り扱い状況、SNSのハッシュタグや「いいね」の推移を合わせて見れば、ブランドの人気の変化はより鮮明になります。
データは嘘をつかない、というのはこの世界でもその通りです。
V字回復ブランドを見たことがない理由
私の経験上、一度売れなくなったブランドが劇的に復活する姿を見たことはありません。
理由はシンプルで、単に商品を改善すれば良いという問題ではなく、ブランド全体の価値が既に低下しているからです。
顧客の信頼を失ったブランドが再び選ばれるためには、商品ラインナップの大幅な見直しに加え、ブランドイメージや流通戦略の再構築が不可欠です。
しかし、これを短期間でやり遂げるのは現実的に難しく、結果としてそのまま市場から姿を消していくケースが多いのです。
ブランド再起に必要な条件

売れなくなったブランドが再起を果たすためには、単なる一時的なテコ入れでは不十分です。
顧客が「また買いたい」と思える理由を改めてつくり直す必要があります。
そのためには、商品そのものとブランド価値の両方を徹底的に見直すことが欠かせません。
商品ラインナップの徹底的な見直し
まず必要なのは、ターゲットにしっかりと刺さる商品ラインナップの再構築です。
過去にヒットしたアイテムの色違いや生地違いといった「小手先の変化」では顧客の心は動きません。
他ブランドでも買えるようなありきたりな物づくりから抜け出し、明確な強みや差別化を打ち出すことが求められます。
つまり、ブランドとして「今、顧客に提供すべき価値は何か」を突き詰めなければ再起はあり得ません。
ブランド価値の再構築が不可欠
もう一つの条件は、ブランド価値そのものの立て直しです。
売れ行きが落ちているということは、多くの場合ブランドの信頼や存在感が低下しているサインです。
その原因を突き止めることが先決で、しばしば取扱店舗による安売りやブランドの乱立が価値を下げているケースが見受けられます。
ブランド価値を守るためには、どの店舗に扱ってもらうか、どのように顧客に見せていくかといった戦略的判断が欠かせません。
商品を磨くだけでなく、ブランドをどう育てるかが問われるのです。
ブランド価値を下げる落とし穴

売れなくなったブランドの背景には、商品力の問題だけでなく、ブランド価値そのものを損なってしまう要因があります。
その代表例が安売りと、取扱店の選び方です。
安売りによる信頼失墜
セレクトショップが値引き販売に走ると、顧客の信頼は一気に揺らぎます。
「待てば安くなる」という認識が広がり、定価で購入してくれるファンが離れてしまうのです。
結果的に、ブランドが持っていた希少性や世界観は崩れてしまい、再起どころか下落に拍車をかけてしまいます。
取扱店選びに問われる経営センス
もう一つ見逃せないのは、取扱店の選び方です。
ブランド価値を下げるような販売姿勢の店舗を「売れているから」と評価してしまうケースは少なくありません。
しかし実際には、短期的な売上を稼ぐ一方で、ブランドの長期的な信頼を削いでいることも多いのです。
どの店舗に扱ってもらうか、その判断はブランド経営におけるセンスが問われる重要なポイントだと感じます。
売れなくなったブランドの再起はあるか

今回の記事を読んで「言っていることは分かるが、現実的ではない」と受け止めるだけで行動しないブランドは、正直なところ先がありません。
重要なのは、問題点を冷静に把握し、改善を積み重ねていくことです。
経営が上向くまで資金が持つのか、それとも改善が追いつかず資金が尽きて廃業するのか、選択肢はその二つしかありません。
展示会での小手先の営業トークに頼ったところで、セレクトショップはそこまで甘くはありません。
売れなくなったブランドこそ、真剣に改善を図り、再び顧客に選ばれる存在になってほしいと願うばかりです。
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